事業者が法人登記を行い、事業を始めた時点で、法人には納税義務が発生します。法人が納める税金のうち、代表的なものが法人税、法人住民税、法人事業税からなる『法人3税』です。似たような名前の税金ですが、法人税は国税、残りの2つは地方税であり、納税先も違えば税金のかかる対象も変わってきます。会社を運営する上でこれらの違いをしっかりと理解しておくことが重要です。今回は法人3税の基本的な内容について解説します。
【法人税の計算方法、申告期限】
会社を経営するとき、消費税や固定資産税など、様々な税金を納めなければなりません。特に法人3税は会社が納める税金のなかでも比重が大きく、とても重要な税金です。法人3税は、法人税、法人住民税、法人事業税で構成され、それぞれ性質が異なります。
まず、法人税は、会社の利益に対して課せられる税金で、個人でいうところの所得税に該当します。ただし、個人の所得税は所得に応じて税率が変わる累進課税なのに対し、法人税は、一部例外はあるものの、原則的に税率は固定されています。所得の低い中小企業などには軽減税率が適用され、基本的には法人税率23.2%で計算を行います。
法人税の納税額は、『所得×法人税率』で求めることができます。ここで注意したいのが、所得をみちびくための費用の取り扱いです。
会計上、利益は収益から費用を引いて求めますが、必ずしも、『損金=費用』ではありません。駐車違反の罰金や税金の延滞金など、会社のために使用したお金であっても、損金にならないものもあるからです。収益から費用を引いたものは『利益』と呼び、税務会計上の所得とは上記のような考え方の違いからズレが生じます。そのため、税務会計上の所得は、会計上の利益に様々な調整を行うことにより算出されます。その点に注意し、正しく所得を求めるようにしましょう。
ちなみに、こうして算出された法人税額に基づいて、法人税の申告と納税を行うことになります。申告期限は、事業年度が終了した日の翌日から2カ月以内となっているので、忘れずに提出しましょう。
【法人住民税と法人事業税は地方税】
法人税が国税なのに対し、法人住民税は地方税です。したがって、会社の事業所がある地方自治体に納税することになります。法人住民税は個人の住民税と同様に、都道府県民税と市区町村民税に分かれています。東京23区に事業所がある場合のみ、例外的に都民税として、ひとまとめになります。法人住民税は、法人税割と均等割で構成されており、法人税割が法人税額を基礎として課税されるのに対し、均等割は資本金や従業員の数に応じて課税されます。つまり、均等割は定額で課税されるため、たとえ赤字によって法人税額が0円だったとしても、納税の義務が発生するのです。
たとえば、東京都の場合は、資本金1,000万円以下で従業員が50人以下の企業の場合、均等割額は7万円です。1,000万円超から1億円以下で、従業員が50人超の企業であれば、20万円と定められています(いずれも1つの特別区内のみに事務所等を有する法人のケース)。
そして、法人事業税も、法人住民税と同じ地方税です。そもそも、法人事業税は、どの会社も事業を行う際に各都道府県の行政サービスを受けているため、その費用を負担するべきという考えに基づいた税金です。したがって、納税先は事業所のある都道府県になります。法人事業税は、『所得×法人事業税率』で求めることができますが、法人事業税率は各自治体の規定によって異なります。なお、法人事業税は、法人税や法人住民税とは異なり、経費として損金算入ができるという特徴があります。申告書を提出した事業年度の経費になるので、忘れずに計上してください。ちなみに、法人住民税と法人事業税の申告書の提出期限も、法人税と同じ、各事業年度終了の日の翌日から2カ月以内となっています。
これら法人3税は、法人に関する税金のなかでも、もっとも基本的なものです。実際の申告や納税などは専門家に任せる場合もありますが、知識があるに越したことはありません。
法人を営むうえで、大切な法人3税。基本的な要素について、いま一度確認しましょう。
※本記事の記載内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。